毒を食らわば皿まで

アダルトチルドレン(AC)・吃音症・社交不安障害(SAD)・依存症・うつ病の方、また、心を病むすべて方へ

元部下が自殺した話

会社の飲み会の最中、携帯が鳴った。
一年前に退職した会社の部下(以下Y)からだ。私が一週間くらい前に電話した、その折り返しだろう。
電話に出ると相手はYではなく、Yと交際していた女性(以下 Aさん)だった。


Aさん「初めまして、Yと交際していたAと申します。」
私「初めまして、Y君は?」
Aさん「あの…お電話をいただいたようなので、お伝えしなければならないと思い、折り返したのですが……」
私「はい」
Aさん「実は……Yは自殺しました。つい先日葬儀を終えたばかりです。」
私「そうですか………御冥福をお祈りいたします。」


私はAさんにYの墓参りをしたい旨を告げ、Yの実家の連絡先を教えてもらい電話を切った。
そして、もやもやした何かを抱えながら飲み会の席へと戻った。

飲み会からの帰り道、私はYのことを考えずにはいられなかった。
一年前まで共に働いていた部下が自殺した、それはもちろんある。しかしそれよりも、Yが自殺した理由に思い当たる節が私にはあったのだ。


Yは私よりも3、4つ歳下で仕事ができる優秀な部下だった。いわば右腕のような存在だった。
二年ほど共に働いたであろうか、Yはやや欠勤が多かった。二度ほど一週間無断欠勤をしたことがあった。
一度目は軽く聞くにとどめたが、二度目ともなるとちゃんと理由を聞かないわけにはいかない。

数日後、Yとサシで飲みに行った。
初めはたわいのない会話をし、互いに軽く酔ったところで、とがめない形で理由を聞いた。
Yはひと通り理由を述べ、そして最後にこう言った、「もう死にたい…」と。
Yが「もう死にたい…」と言った後、私はYにどのような言葉をかけたかはおぼえていない。Yも「もう死にたい…」言った切り、自分のことを話すことはなかった。


もし当時、私にうつ病の知識があったなら、もし、Yが「もう死にたい…」と言ったときにもう少し話を聞いてあげることができていれば、そう思うことがないと言えば嘘になる。

しかし、Yと働いていた当時、精神障害で最もメジャーなうつ病ですら、社会における認知度や理解度は今よりはるかに低かった。私もうつ病という名前こそ知っていたものの、その知識はなかった。むしろ「うつ病なんて甘え」「うつ病なんて気持ちの問題だ」、そう思っていた。

今ならYの言った「死にたい…」の意味がわかる。なぜなら、Yの訃報を聞いたとき、私自身うつ病に羅漢していたからである。